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チャットGPTで小説を書く方法|初心者向けコツと注意点

チャットgpt 小説

 「チャットGPTで小説を書いてみたいけれど、どこから手をつけていいか分からない」「アイデアはあっても、物語を最後まで書き上げる自信がない」と感じてはいませんか。AIという便利なツールを前にして、具体的な使い方やクオリティ、さらには著作権の問題など、多くの疑問が浮かぶことでしょう。

この記事では、チャットGPTを使った小説執筆の基本的な手順から、プロの作家も注目する応用テクニック、そして見落としがちな注意点まで、網羅的に解説していきます。あなたの創作活動がより豊かで実りあるものになるよう、具体的な方法を一つひとつ丁寧に説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

  • ChatGPTを使った小説執筆の基本的な手順

  • 物語の質を向上させる具体的なプロンプトのコツ

  • 執筆プロセスを効率化するツールやテクニック

  • 著作権などAI利用時に注意すべき法的ポイント

 

チャットgptで小説を書く基本と可能性

 

  • ChatGPTで小説を書くメリットとは

  • 芥川賞受賞作でも活用されたAI執筆術

  • GPTsを使いプロット作成を効率化

  • 高性能なo1モデルで本文を生成する

  • 魅力的なプロットをAIで作成する方法

ChatGPTで小説を書くメリットとは

 ChatGPTを小説執筆に活用することには、単に文章を書く手間が省けるという以上に、作家の創造活動そのものを根底から変革するほどの大きな可能性が秘められています。主なメリットとして、「執筆プロセスにおける時間という制約からの解放」「作家自身の創造性の壁を突破する手助け」、そして「文章の表現力を拡張する機会の提供」という3つの点を挙げることができます。これらは、執筆経験の有無にかかわらず、すべての書き手にとって強力な追い風となり得るものです。

 まず、最大の利点として挙げられるのが、執筆の効率が劇的に向上する点です。通常、一本の小説を完成させるには、物語の骨格となるプロット作り、魅力的なキャラクターの創造、そして舞台となる世界観の構築といった準備段階に、膨大な時間と労力がかかります。しかし、ChatGPTを活用すれば、これらの工程を驚くほど短縮させることが可能です。例えば、物語の基本的な設定やテーマを伝えるだけで、AIは数分後には物語全体の流れを示すプロットの草案を複数提案してくれます。これにより、書き手は最も時間がかかる初期段階の負担から解放され、キャラクターの細かな心情描写や、読者を引き込むための伏線の配置など、より創造的で物語の質を深める作業に集中できるようになるのです。

 次に、自分一人では思いもよらないような独創的なアイデアを得られる点も、計り知れない魅力と言えます。人間の想像力は、どれだけ豊かであっても、無意識のうちに過去の経験や知識、好みのパターンといった「思考のクセ」に縛られがちです。一方で、膨大なデータを基に言葉をつなぐChatGPTは、そのような常識や固定観念に一切とらわれません。このため、例えば「古代ローマとサイバーパンクを融合させた世界」といった奇抜なテーマを投げかけると、人間ではなかなか発想できないようなユニークな設定や物語の展開を提案してくれることがあります。創作に行き詰まった際の「壁打ち相手」として対話することで、思考が整理されたり、新しいインスピレーションの源泉として活用したりできるのは、非常に頼りになる点です。

 さらに、自身の文章表現の幅を大きく広げるきっかけにもなります。同じ情景を描写するにしても、言葉の選び方一つで読者に与える印象は全く異なります。ChatGPTは、その豊富な語彙と文法知識を活かして、「この場面を、もっと読者が不安を感じるような不気味な雰囲気で描写してほしい」といった抽象的な要望にも応え、多様な表現の選択肢を示してくれます。また、同じシーンを特定の文豪の文体を模倣して書かせたり、主人公の視点から敵役の視点へと切り替えて描写させたりすることも可能です。このような使い方を通じて、自分では思いつかなかった表現方法や物語の見せ方を学ぶことができ、結果として書き手自身の表現力を向上させるための、優れた「文章の家庭教師」の役割も果たしてくれるでしょう。

 このように、ChatGPTは単なる文章作成の代行ツールではありません。むしろ、時間や発想の限界といった制約から作家を解き放ち、その創造性を何倍にも増幅させてくれる「共創パートナー」として、執筆活動全体を力強くサポートしてくれる存在なのです。

芥川賞受賞作でも活用されたAI執筆術

 

 ChatGPTをはじめとする生成AIの技術は、もはや単なる実験的な道具ではなく、日本の文学界で最も権威のある賞の一つ、芥川賞の受賞作で活用されるほど、現実的で強力な創作ツールとして認知され始めています。この事実は、AIを使った小説執筆を考えるすべての人にとって、大きな可能性を示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

 その具体的な事例が、2024年1月に第170回芥川賞を受賞した、作家・九段理江氏の作品『東京都同情塔』です。この小説は、AIが社会に深く浸透し、人々の言葉や思考にまで影響を与えている未来の東京が舞台となっています。注目すべきは、作品のテーマだけではありません。九段氏自身が受賞後の記者会見で、この小説を書き上げる過程において、ChatGPTのような生成AIを実際に利用したことを公言したのです。

 報道によると、作品全体の文章のうち、およそ5%がAIによって生成されたテキストで構成されているとされています。これは、AIが書いた文章をそのままのかたちで採用した部分もあれば、作家自身が編集や修正を加えて作品に組み込んだ部分もあることを意味します。この告白は大きな話題を呼び、AIが人間の創造性を補助し、時には協力して作品を作り上げる「共創パートナー」となり得ることを、明確な形で社会に示しました。

 このAI活用に対する文学界の反応は、実に様々でした。例えば、芥川賞の選考委員を務めた作家の平野啓一郎氏は、AIの使用そのものを問題視しないという考えを示しています。これは、最終的な作品の独創性や文学的な価値が、作家という人間の創造性に由来するものであれば、その過程でどのような道具(ツール)が使われようと本質的な問題ではない、という見方です。これは、かつて写真技術が登場した際に、一部の画家たちがその芸術性を疑問視した歴史とも重なります。新しい技術は、いつの時代も既存の価値観に揺さぶりをかけるものなのです。

 一方で、「自らの力だけで言葉を紡いでいる他の作家に対して失礼ではないか」といった批判的な声が上がったのも事実です。このような意見の背景には、創作活動における苦労や、一つひとつの言葉を吟味する職人的な作業を尊ぶ、古くからの価値観があると考えられます。

 しかし、この一連の議論が私たちに教えてくれる最も大切な点は、これからの創作活動において問われるのは「AIを使うか、使わないか」という単純な二者択一ではないということです。むしろ、「AIという強力な道具を、作家がいかにして使いこなし、人間ならではの、あるいはこれまでにない新しい表現を生み出すか」という点が、より重要になってきます。

 九段氏の作品のように、AIというテーマを扱う小説の執筆にAI自身を用いるという、作品の構造と制作手法が結びついた試みは、AIの活用が単なる効率化や手抜きではなく、作家の表現手法の一部となり得ることを示しています。AIをゴーストライターとして使うのではなく、膨大な知識を持つ優秀なアシスタント、あるいは思考を刺激してくれる共同研究者のように捉え、その能力を引き出し、最終的に自身の作品としてまとめ上げる「編集能力」や「ディレクション能力」。それこそが、AI時代の新しい作家に求められるスキルの一つになっていくのかもしれません。

GPTsを使いプロット作成を効率化

 

 ChatGPTには、特定の作業を専門に行う自分だけのアシスタントを作り出せる「GPTs」という非常に便利な機能があります。これは、小説執筆における最も重要かつ時間のかかる工程である「プロット(物語の設計図)」作りを、劇的に効率化し、その質を高めるための強力な武器となります。

 まず、GPTsがどのようなものかを簡単に説明します。通常のChatGPTが、様々な道具が雑多に入った大きな道具箱だとすれば、GPTsは「小説のプロット作り」という作業に必要な道具だけを選んで集め、自分専用にカスタマイズした小さな道具箱を作るようなものです。事前に「あなたは読者の心を掴むプロット作りの名人です」「物語は必ず起承転結の構成にしてください」といったルールを記憶させておくことができます。このため、毎回同じ指示を長々と入力する手間が省け、常に一貫した品質でプロット作成を進めることが可能になるのです。

 このGPTsを活用することで、プロット作成の一連の流れを、半分は自動で進めるような形で体系化できます。例えば、「小説家になろう」のような投稿サイトで人気を得ることを目指す場合、以下のようなステップで進めると非常に効果的です。

 

ステップ1:発想の種まき(キーワード入力)

 

 最初に、あなたが書きたい物語の核となる「キーワード」をいくつかGPTsに伝えます。これは、「異世界転生」や「学園ラブコメ」といったジャンル名でも良いですし、「復讐」「タイムリープ」「勘違い」といった物語の中心となる要素でも構いません。このキーワードが、物語全体の方向性を決めるための大切な「種」となります。

 

ステップ2:第一印象を決める(タイトル・あらすじ生成)

 

 入力されたキーワードを基に、GPTsは読者の興味を引きそうなタイトル案と、物語の概要を示すあらすじ案を複数提案してくれます。タイトルとあらすじは、読者がその小説を読むかどうかを判断する最初の「顔」となる部分です。ここでAIに複数の選択肢を出してもらい、じっくり比較検討することが、後の成功につながる重要な工程となります。

 

ステップ3:人間の感性で磨く(選定と修正)

 

 AIの提案をそのまま受け入れるのではなく、必ずあなた自身の感性で磨きをかけることが大切です。「このタイトル案は面白いけど、もっと主人公の魅力が伝わる言葉を入れたい」「このあらすじだと結末が読まれそうだから、少し謎を残す形にしよう」というように、書き手の「こうしたい」という意志を反映させることで、作品はよりオリジナルなものへと進化します。

 

ステップ4:設計図の完成(詳細設定の自動生成)

 

 タイトルとあらすじが固まると、GPTsはそれを基にして、執筆に必要な詳細な設計図を自動で作り上げていきます。これには、登場人物の詳しいプロフィールを記した「キャラクターシート」、物語の舞台となる世界の歴史や文化といった「背景設定」、そして物語の始まりから終わりまでを章ごとに詳しく記した「詳細プロット」などが含まれます。

 ここで特に重要なのは、プロット作成という「設定」の工程と、実際に文章を書く「本文生成」の工程を、意図的に分割して考えることです。なぜなら、長編小説のように扱う情報が多くなると、AIは初期の設定を忘れてしまい、途中でキャラクターの性格が変わってしまうといった矛盾が生じやすくなるからです。このプロセスは家の建築によく似ています。まず建築家(GPTs)が詳細な設計図(プロット)を完璧に描き上げ、その後に大工(本文生成用のAI)が設計図に忠実に従って家を建てる。この手順を踏むことで、物語全体の一貫性が保たれ、途中で話が破綻するリスクを大幅に減らすことができるのです。

 このように、GPTsは単なる時短ツールにとどまりません。物語の土台となるプロットの品質を確保し、執筆という長い旅の途中で道に迷わないための「羅針盤」として、あなたの創作活動を力強く支えてくれるでしょう。

高性能なo1モデルで本文を生成する

 物語の設計図であるプロットが完成したら、次はいよいよ、読者が直接触れることになる「本文」の執筆です。この段階は、小説の面白さを決定づける最も重要な工程であり、ここでより高性能なAIモデルを選択することが、作品全体の質と量を飛躍的に向上させるための鍵となります。これは、素晴らしい設計図を基に家を建てる際、経験豊富な腕利きの職人を選ぶことに似ています。

 現在、ChatGPTには無料で利用できる標準的なモデルの他に、有料プラン(ChatGPT Plusなど)で利用可能な、より高度な能力を持つモデルが存在します。これらの高性能モデルは、いわばAI界の「F1カー」のようなものです。標準モデルが一般的な乗用車だとしたら、どちらも文章という道を走ることはできますが、その速度、持久力、そして何より、複雑な物語の展開という難コースを走り抜く能力において、格段の違いがあるのです。

 この性能差が特に顕著に現れるのが、長文の小説を生成する場面です。インプットされた情報の中には、同じプロットを基に全8章の小説を生成させた比較検証の事例がありました。その結果、標準モデルの出力が約8,000文字であったのに対し、高性能モデルは約66,000文字という、実に8倍以上もの圧倒的な文章量を一度に生成したとされています。

 なぜ、これほどの差が生まれるのでしょうか。理由は主に2つ考えられます。

 一つ目は、「長文を書き続ける力(持久力)」の違いです。高性能モデルは、一度に記憶できる情報の量(専門的にはコンテキストウィンドウと呼ばれます)が非常に大きいです。そのため、物語の序盤で提示された伏線や登場人物の細かい設定を忘れることなく、一貫性を保ったまま長い文章を書き続けることができます。一方で、標準モデルは記憶できる量が限られているため、長い話になると途中で「息切れ」を起こし、話が脱線したり、短い文章で終わってしまったりすることが多くなります。

 二つ目は、「文章そのものの質の高さ」です。高性能モデルは、単に長い文章が書けるだけではありません。より複雑な比喩表現を巧みに使ったり、登場人物の心の揺れ動きを繊細に描写したり、読者の予想を心地よく裏切るような意外な展開を考え出したりする、創造的な能力にも長けています。また、「この章では主人公の焦燥感を中心に、会話は少なめで情景描写を多めに」といった、より複雑でニュアンスを含んだ指示を正確に理解し、それを文章に反映させる能力も高いのです。

 ただし、このように強力な高性能モデルですが、利用には注意点もあります。多くの場合、月額制の有料プランへの加入が必要であり、さらに一定時間内に利用できる回数に制限が設けられていることがほとんどです。

 このため、最も賢明な使い方は、作業内容に応じた戦略的な使い分けでしょう。アイデア出しやプロットの骨子作りといった、試行錯誤を繰り返す工程は、回数制限を気にせず使える標準モデルで気軽に行います。そして、物語の完成度を決定づける本文執筆という「勝負どころ」で、高性能モデルの貴重な利用回数を集中して投入するのです。この方法であれば、コストを抑えつつ、AIの能力を最大限に引き出すことが可能になります。

 以上のことから、高性能モデルは、小説執筆における強力な切り札と言えます。作品の完成度を少しでも高めたいと考えるならば、この高性能モデルへの投資は、非常に価値のある選択肢となるでしょう。

モデルごとの特徴と使い分け

 ChatGPTを小説執筆に最大限活用するためには、AIのモデル(種類)ごとの得意なこと、不得意なことを理解し、作業の段階に応じて「道具」として賢く使い分ける戦略的な視点が非常に重要になります。これは、優れた料理人が、野菜を切る包丁と魚をさばく包丁を使い分けるのと同じことです。ここでは、それぞれのモデルの役割と、それらを組み合わせた効率的な執筆フローについて詳しく解説します。

 

標準モデルの役割:陽気でフットワークの軽いアイデアマン

 

 まず、無料で利用できることが多い「標準モデル」(例: GPT-4oなど)の役割から見ていきましょう。このモデルは、「陽気でフットワークが軽く、頼めばすぐにたくさんの案を出してくれるアイデアマン」のような存在と考えると分かりやすいです。

得意な作業:

  • アイデアの壁打ち: 「主人公が使える魔法の種類を30個考えて」「感動的なラストシーンのアイデアを10パターン出して」といった、質よりも量を求めるブレインストーミングで真価を発揮します。

  • 短い文章の生成: 登場人物の短いセリフや、物語の舞台となる街の簡単な説明など、断片的な文章を素早く作るのに適しています。

  • 情報の整理: 複雑に絡み合ったプロット案や、長文の設定資料を読み込ませ、「この内容を箇条書きで要約して」と指示すれば、情報を分かりやすく整理してくれます。

不得意な作業と注意点:

 一方で、このモデルは長編小説のように、物語全体の膨大な情報を記憶しながら一貫性を保って書き続ける作業は少し苦手です。途中で重要な設定を忘れてしまったり、話が脱線してしまったりする「忘れん坊」な一面もあるため、物語の根幹をなす長文の執筆にはあまり向きません。

 

高性能モデルの役割:熟練の筆致を持つベテラン作家

 次に、ChatGPT Plusなどの有料プランで利用できる「高性能モデル」です。このモデルは、「細部までこだわり抜く熟練の作家」や「複雑な構造も完璧に仕上げる建築家」に例えることができます。

得意な作業:

  • 長編本文の執筆: 詳細なプロットに基づき、登場人物の性格や物語の伏線を記憶したまま、数万字に及ぶ一貫した本文を書き上げる能力に長けています。

  • 繊細な感情描写: 人物の心の葛藤や喜び、悲しみといった、言葉にしにくい感情の機微を、深みのある豊かな表現で描写することが得意です。

  • 複雑なプロットの展開: 複数の伏線を巧みに絡ませながら、物語を矛盾なくクライマックスへと導いていきます。

不得意な作業と注意点:

 その能力は非常に高い反面、利用には月額料金が必要な上、一定時間内に使える回数に制限が設けられていることがほとんどです。「出張費の高い超一流の専門家」のような存在であり、気軽に何度も呼び出すことは難しい、という点を理解しておく必要があります。

 

戦略的な執筆ワークフローの提案

 

 これらの特徴を踏まえると、最も効率的で質の高い作品を生み出すための執筆フローが見えてきます。

  1. 第1段階【構想・設計フェーズ】(標準モデルの出番):

    まず、コストを気にせず使える標準モデルやGPTsを活用し、物語のアイデア出しやプロット作成、キャラクター設定などを自由に行います。この段階では、失敗を恐れずに何度も試行錯誤を繰り返すことが重要です。

  2. 第2段階【執筆・構築フェーズ】(高性能モデルの出番):

    完璧な設計図(プロット)が完成したら、いよいよ本文執筆です。ここで、有料の高性能モデルを投入します。物語の心臓部を作るこの最も重要な工程に、貴重な利用回数を集中させるのです。

  3. 第3段階【推敲・仕上げフェーズ】(再び標準モデルの出番):

    高性能モデルが書き上げた本文の草稿を、再び標準モデルに読ませます。「誤字脱字はないかチェックして」「このセリフの他の言い回しを提案して」といった、細かな編集・校正作業を補助させることで、作品の完成度をさらに高めていきます。

 このように、各モデルの長所を最大限に活かし、短所を補い合うように使い分けることは、単なる節約術ではありません。AIという強力なツールの性能を100%引き出し、執筆プロセス全体の質と効率を最大化するための、非常に有効な「創作戦略」なのです。

 

ChatGPTで小説を書くメリットとは

 

 ChatGPTを小説執筆に取り入れることには、単に作業が速くなるという以上に、作家の能力そのものを拡張するような、3つの大きなメリットが存在します。これらを、作家を助ける「三種の神器」として捉えると、その価値がより分かりやすくなるでしょう。具体的には、「超高速アシスタント」「アイデアの泉」「言葉のソムリエ」としての役割です。これらを使いこなすことで、執筆経験の有無にかかわらず、誰もが物語作りの新たな地平を切り開くことが可能になります。

 

神器①:超高速アシスタント(執筆の効率化)

 

 一つ目の神器は、24時間365日、文句も言わずに働いてくれる「超高速アシスタント」としての側面です。小説執筆には、物語の面白さの核心部分とは別に、膨大な時間のかかる地味で面倒な作業が数多く存在します。ChatGPTは、これらの作業を瞬時に肩代わりしてくれます。

 例えば、ファンタジー小説を書く場合、舞台となる世界の歴史や地理、文化、社会制度といった詳細な設定をゼロから考えるのは大変な作業です。しかし、「中世ヨーロッパ風で、魔法が存在する王国の設定を考えて」と指示すれば、ChatGPTはものの数分でその草案を作成してくれます。また、「物語に登場するキャラクターの名前をファンタジー風に100個リストアップして」といった単純作業も一瞬で完了します。

 このように、時間のかかる準備作業をAIに任せることで、書き手は最も大切な「どんな物語を紡ぐか」「登場人物の心をどう動かすか」といった、本当に創造的な部分に自身のエネルギーと時間を集中させることができるようになるのです。

 

神器②:アイデアの泉(独創的なアイデアの創出)

 

 二つ目の神器は、尽きることのない「アイデアの泉」としての役割です。人間の発想は、どうしても過去の経験や知識の範囲内に収まりがちですが、AIはそうした枠にとらわれません。全く関係のない要素同士を組み合わせることを得意としており、時として人間では思いもよらない「化学反応」を起こしてくれます。

 たとえば、「江戸時代の日本」と「サイバーパンクSF」という、全く異なるジャンルを組み合わせて物語を考えてもらうとしましょう。するとAIは、「お侍さんが脳にチップを埋め込み、刀とレーザーガンで戦う未来都市での探偵物語」といった、奇抜で刺激的なアイデアの種を提案してくれるかもしれません。また、「勇者が魔王を倒す」というお決まりのパターンに対して、「もし魔王が現代社会に転生してサラリーマンになり、勇者の末裔である理不尽な上司と会社で戦う羽目になったら?」といった、逆転の発想を提供してくれることもあります。

 もちろん、AIが出すアイデアのすべてが面白いわけではありません。しかし、その玉石混交の提案の中から光る原石を見つけ出し、自分なりに磨き上げていくことで、ありきたりな物語から一歩抜け出した、読者の記憶に残るユニークな作品を生み出すきっかけを掴むことができるでしょう。

 

神器③:言葉のソムリエ(表現力の向上)

 

 三つ目の神器は、あなたの言葉選びを助け、表現の幅を広げてくれる「言葉のソムリエ」としての働きです。文章の表現力を高める上で、ChatGPTは非常に優れた相談相手となります。

 単に「『嬉しい』の他の言い方を教えて」といった類語の提案にとどまりません。例えば、「主人公が長年の夢を叶えた瞬間の『嬉しい』という気持ちを、『嬉しい』という言葉を一切使わずに表現して」といった、より高度で文学的な相談にも乗ってくれます。するとAIは、「彼の胸の中で、長年凍っていた湖がようやく溶け出し、温かい春のせせらぎが聞こえ始めた」といった、詩的な表現を提案してくれるかもしれません。

 また、「この夕焼けのシーンの描写は少し物足りないから、登場人物の悲しい心情がより伝わるように書き直して」と指示すれば、同じ風景でも全く異なる印象の文章を生成します。このように、AIを「表現の練習相手」として活用することで、自分だけでは気づけなかった言葉の選び方や描写の切り口を学び、作家としての技量を向上させることが可能です。

 以上のことから、ChatGPTは単に作業を代行するだけのツールではないことが分かります。作家が持つ時間とエネルギーを最も大切な核心部分に集中させ、創造性の限界を突破し、表現力を磨き上げるための強力な翼となり得るのです。

 

小説の質を高めるプロンプト設計のコツ

 ChatGPTを自在に操り、質の高い小説を生み出す技術は、まるで魔法の呪文を唱えることに似ています。優れたプロンプト(呪文)はAIという魔法の力を最大限に引き出し、読者の心を動かす物語を紡ぎ出しますが、曖昧で凡庸なプロンプトでは、期待外れの結果しか得られません。この「優れた呪文」を意図的に作り出すための設計図こそが、プロンプト設計の技術です。

 ここでは、その中でも特に効果的で、多くの人が参考にしている「深津式プロンプト」などの考え方を基に、AIの能力を最大限に引き出すための具体的な4つの要素を詳しく解説していきます。これは、AIに渡す「注文票」を、誰が読んでも完璧に理解できるように書き上げる作業と考えると分かりやすいでしょう。

 

① 役割を与える(AIに役者の魂を吹き込む)

 

 まず最も大切なのが、ChatGPTに特定の「役割」を与えることです。これは、AIという存在に、物語を語るにふさわしい役者の魂を吹き込む作業に例えられます。「小説を書いて」とだけ指示するのではなく、「あなたは、読者を必ず恐怖のどん底に突き落とすことに情熱を燃やす、ベテランのホラー作家です」と役割を定義します。

 こうすることで、AIの思考の方向性が定まり、単なる文章生成システムではなく、その役割になりきった専門家として振る舞い始めます。結果として、出力される文章のトーン、語彙、そして文体全体が、こちらの意図した雰囲気に最適化され、格段に安定するのです。

 

② ルールを決める(作品の骨格と雰囲気を固める)

 

 次に、作品の世界観を形作るための具体的な「ルール(制約条件)」を設定します。これはAIの創造性を縛るものではなく、むしろ物語が迷子にならないように方向性を示し、望んだ通りの雰囲気を生み出すための大切なガイドラインとなります。

  • 文体やトーン: 「文体は、静かで少し切ない雰囲気でお願いします」「登場人物の会話は、関西弁を使ってユーモラスにしてください」

  • 視点: 「主人公である『僕』の一人称視点で物語を進めてください」

  • 文字数: 「このシーンは、800字から1000字程度でまとめてください」

  • 禁止事項: 「安易なハッピーエンドは避けてください」「物語の中で『突然』という言葉は絶対に使わないでください」

 このように細かいルールを決めることで、作品全体の統一感が生まれ、よりプロフェッショナルな仕上がりを期待できます。

 

③ 材料を渡す(物語の世界を描くための絵の具)

 

 AIは、与えられた情報を基に物語を構築します。つまり、私たちが渡す「材料」が具体的で豊富であるほど、AIが描く世界の解像度は高くなります。この材料には、キャラクター設定や舞台設定などが含まれます。

 前述の通り、詳細な「キャラクターシート」を渡すことは非常に有効です。それに加えて、物語が始まる「シーン」の設定も、五感に訴えるように具体的に記述すると良いでしょう。例えば、「舞台は1980年代の東京。外は土砂降りの雨。深夜のジャズ喫茶の片隅で、主人公は3年前に失踪した恋人から届いた一通の手紙を、震える手で開けようとしている」といった情景を描写します。こうした具体的な材料が、AIにとって物語をリアルに描くための大切な「絵の具」となるのです。

 

④ 出力形式を整える(完成品の形を指定する)

 

 最後に、どのような形で文章を返してほしいか、完成品の「出力形式」を明確に指定します。これを怠ると、AIは小説ではなく、箇条書きや対話形式の文章を返してくることがあります。

 「以上の条件で、この物語の冒頭部分を小説形式で執筆してください」あるいは「登場人物二人の会話文だけで、この緊張感のあるシーンを構成してください」というように、求めるアウトプットの形をはっきりと伝えることが重要です。

  悪いプロンプトの例 良いプロンプトの例
指示内容 恋愛小説を書いて。 あなたは、心の機微を描くのが得意な恋愛小説家です。以下の条件で、物語の導入部を800字程度で執筆してください。【条件】舞台は鎌倉の古い喫茶店。主人公(28歳女性、書店員)が、5年前に別れた元恋人(29歳男性、写真家)と偶然再会するシーン。文体は静かで少し切ない雰囲気で、主人公の一人称視点でお願いします。
期待される結果 ありきたりで、誰が読んでも面白みのない文章。 具体的で情景が目に浮かび、読者の心を掴む導入部。

 このように、プロンプト設計とは、単なる指示出しの技術ではありません。それは、AIという強力な共作者との「対話術」であり、同時に、作家自身の頭の中にある曖昧なイメージを明確な言葉に落とし込む「自己分析」の作業でもあります。優れたプロンプトを書く練習は、AIを使いこなす技術だけでなく、作家自身の構想力をも鍛え上げてくれるでしょう。

生き生きとしたキャラクター設定のポイント

 

 物語の面白さは、プロットや世界観だけでなく、登場するキャラクターがどれだけ魅力的かによって大きく左右されます。読者は、まるで実在するかのような生き生きとしたキャラクターに心を寄せ、感情を重ね合わせることで、物語の世界に深く没入していきます。これは、AIに小説を書かせる際にも全く同じことが言えます。AIに深みのある人物像を創り出させるには、そのキャラクターの「魂」とも言える、詳細な設計図を提供することが不可欠です。

 単に「勇敢な主人公を創って」と指示するだけでは、どこかで見たような、ありきたりな人物像しか生まれません。そこで非常に有効となるのが、キャラクターに関する情報を具体的にまとめた「キャラクターシート」をプロンプトとしてAIに与える方法です。この設計図が詳細であればあるほど、AIはキャラクターの行動やセリフに一貫性を持たせ、物語の中で本当に「生きている」かのように振る舞わせることができるのです。

 ここでは、AIにキャラクターの魂を吹き込むための、4つの重要な要素について掘り下げて解説します。

 

① 「外面」を決める:読者が最初に目にする姿

 

 外面とは、名前や年齢、性別、そして容姿といった、キャラクターの基本的な情報です。これらは単なる記号ではなく、読者がキャラクターに抱く第一印象を決定づける大切な要素となります。

 例えば、「古風な名前」か「現代的な名前」かによって、その人物の背景にある種のイメージが生まれます。外見についても、「何度も修繕された革のブーツ」は長い旅路を、「染み一つない真っ白なシャツ」は几帳面な性格を、それぞれ読者に想像させます。さらに、「眉の上にある古い傷跡について、彼は決して語ろうとしない」といった一文を加えるだけで、そのキャラクターの過去に謎が生まれ、読者の興味を引くフックとなります。

 

② 「内面」を掘り下げる:矛盾こそが魅力を生む

 

 完璧すぎる超人は、魅力的には映りにくいものです。キャラクターに人間味と深みを与える上で鍵となるのが、「矛盾」の存在です。長所と短所、建前と本音といった、一人の人間の中に共存する矛盾こそが、その人物を忘れがたい存在へと昇華させます。

 AIに指示する際も、この「ギャップ」を意識的に設定すると良いでしょう。「普段は冷静沈着な名探偵だが、実は極度の方向音痴で、一人では帰り道も分からなくなる」「誰よりも強大な魔力を持つ魔法使いでありながら、蝶々だけは怖くて見ることすらできない」といった、思わず微笑んでしまうような弱点や、意外な一面を設定することで、キャラクターは格段に魅力的になります。

 

③ 「歴史」を与える:行動の理由を裏付ける

 

 キャラクターの現在の行動には、必ずその人物が歩んできた「歴史(バックストーリー)」が影響しています。なぜそのキャラクターは他者を信じられないのか、なぜその夢を必死に追いかけているのか。その「なぜ」に対する答えが、過去の出来事にあるのです。

 この背景設定をAIに与えることで、キャラクターの行動に説得力が生まれます。「彼はかつて親友に裏切られた経験があるため、他人に対して常に壁を作ってしまう」といった情報があれば、AIはそのキャラクターに、素直になれない皮肉なセリフを言わせるでしょう。キャラクターを形作った過去の「決定的な出来事」を一つ設定するだけでも、その人物の行動原理は非常に明確になります。

 

④ 「声」を聞かせる:セリフで個性を際立たせる

 

 キャラクターの個性を最も直接的に表現するのが、その「声」、つまり話し方です。一人称(私、俺、僕など)や語尾の特徴はもちろんのこと、よく使う単語の傾向や、話すときのテンポまで具体的に指示することで、セリフは格段に生き生きとしてきます。

 例えば、知的なキャラクターであれば少し難しい言葉を交えて理路整然と長く話すかもしれません。逆に、感情的なキャラクターは、短く断定的な言葉を多用するでしょう。また、「えーっと」「あのですね」といった口癖を設定するのも効果的です。こうした細かな話し方の特徴をAIに覚えさせることで、読者は声に出して読まなくても、誰が話しているのかが自然と分かるようになります。

 このように、詳細なキャラクターシートは、AIに対する単なる情報提供ではありません。それは、AIにキャラクターを「演じさせる」ための、詳細な台本や演技指導書なのです。しっかりと作り込まれたキャラクターは、時に書き手の想像を超えて自律的に動き出し、物語を思わぬ方向へと力強く牽引してくれることさえあるでしょう。

なろうRaWiでタイトルとあらすじを評価

 ChatGPTを使ってようやく面白い物語の骨子が固まったとしても、それだけでは成功への道は約束されていません。特に、「小説家になろう」のように毎日何千もの新作が投稿される巨大なプラットフォームでは、そもそも読者に作品を見つけてもらい、第一話をクリックしてもらうこと自体が非常に大きなハードルとなります。この最初の関門を突破するために、極めて有効な戦略が、外部のAI評価サイト「なろうRaWi」の活用です。

 

なぜ第一印象が全てなのか

 

 まず、オンライン小説投稿サイトにおける読者の行動を想像してみてください。読者は、ランキングや新着作品の一覧に並んだ、膨大な数のタイトルの中から、ほんの数秒で「これを読むか、読まないか」を判断しています。このとき、判断材料となるのは「タイトル」と「あらすじ」の二つだけです。本文がどれほど感動的な傑作であったとしても、この第一印象で興味を引けなければ、その存在にすら気づいてもらえないという厳しい現実があります。

 「なろうRaWi」は、この最も重要な「作品の顔」であるタイトルとあらすじが、どれだけ読者の興味を引く力を持っているかを、客観的なデータに基づいて事前に予測してくれる、いわば小説の「人気天気予報」のようなツールなのです。

 

なろうRaWiとは?:ヒット作の法則を学ぶAI評価ツール

 

 このツールは、過去に「小説家になろう」で人気を博した膨大な数のヒット作をAIが学習・分析し、「どのような言葉や構成が読者に好まれやすいか」という法則性を見つけ出しています。利用者は、考えたタイトルとあらすじを入力するだけで、AIがその「ヒットの法則」にどれだけ合致しているかを瞬時に評価し、「FAT」や「S」「A」といった分かりやすいランクで示してくれます。

 一般的に、最高ランクである「FAT」や「S」評価を獲得したタイトルとあらすじは、読者の目に留まりやすく、多くのアクセス数(PV)を獲得できる可能性が高いとされています。本文を一行も書くことなく、この客観的な評価を得られる点が、このツールの最大の強みです。

 

ChatGPTと連携した戦略的な執筆フロー

 

 この「なろうRaWi」とChatGPTを組み合わせることで、非常に戦略的な執筆準備が可能になります。

  1. ステップ1:アイデアの大量生成

    まず、ChatGPT(特にGPTs)に対し、「このプロットを基に、『小説家になろう』で人気が出そうなキャッチーなタイトル案を20個、魅力的なあらすじ案を5パターン作成してください」といった指示を出します。ここでは質より量を重視し、できるだけ多くの選択肢を用意させます。

  2. ステップ2:客観的な評価と選別

    次に、生成された大量の案を一つひとつ「なろうRaWi」に入力し、評価ランクを確認していきます。この段階で、少なくともBランク以上の評価を得たものを有望な候補として選別します。

  3. ステップ3:改善と再評価のサイクル

    有望な候補が見つかったら、今度はそれを基に改善を図ります。「このAランク評価のタイトルを、さらに読者の興味を引くように改良したい。Sランクを目指せるような改善案を10個提案して」と再びChatGPTに指示を出します。そして、その改善案をまた「なろうRaWi」で評価するのです。この「AIで生成→外部ツールで評価→AIで改善」というサイクルを繰り返すことで、タイトルとあらすじの質を飛躍的に高めることができます。

  4. ステップ4:最終決定と執筆開始

    納得のいく高評価(Sランク以上)を得られた案を、正式なタイトルとあらすじとして採用します。この時点で、あなたは「この作品は、多くの読者に興味を持ってもらえる可能性が高い」という客観的なデータに基づいた自信を持って、本文の執筆をスタートさせることができます。

 

この手法の利点と注意点

 

 この手法の最大の利点は、作家個人の「面白いだろう」という主観的な感覚だけでなく、データに基づいた客観的な視点を執筆の初期段階で取り入れられる点にあります。これにより、「頑張って書いたのに、誰にも読んでもらえない」という、創作者にとって最も辛い挫折のリスクを大幅に減らすことが可能です。

 ただし、注意すべき点もあります。素晴らしいタイトルとあらすじは、あくまで読者を物語の入り口へと導く「豪華な招待状」にすぎません。招待状に惹かれて訪れた読者が、実際に物語を読んで「面白くない」と感じれば、すぐに読むのをやめてしまうでしょう。最終的に読者を満足させられるかは、本文そのものの魅力にかかっています。

 また、評価を気にするあまり、流行のキーワードや展開ばかりを追い求めてしまうと、あなたの本当に書きたい独創的な物語から離れてしまう可能性もあります。このツールはあくまで読者を獲得するための戦略の一つと捉え、自身の創造性とバランスを取りながら活用することが賢明です。

生成AIの著作権問題を理解しておく

 ChatGPTを使って小説を執筆することは、まるで未開の地を探検するような、刺激的で可能性に満ちた旅です。しかし、その新しい領域には、著作権という注意すべき「法的なルール」が存在します。このルールを正しく理解しておくことは、安心して創作活動を楽しみ、将来的なトラブルを避けるために不可欠です。ここでは、AIと著作権をめぐる重要なポイントを、分かりやすく解説していきます。

 

① AIが生成した文章の著作権は、誰のもの?

 

 まず、最も基本的な疑問として「AIが書いた文章の著作権は誰に帰属するのか」という点があります。ChatGPTを提供しているOpenAIの利用規約では、原則としてAIが生成した文章の権利は、それを作成した利用者(あなた)に譲渡されると定められています。

 しかし、日本の著作権法に照らし合わせて考えると、少し注意が必要です。法律では、著作権が認められるためには、人間の「思想又は感情を創作的に表現したもの」であること、つまり、人間の「創作的な寄与」が必要とされています。

 これを小説執筆に当てはめてみましょう。例えば、「面白い小説を書いて」というような、非常に単純な指示だけでAIに文章を生成させた場合、そこには人間の創作的な工夫がほとんど介在していないため、その文章の著作権が認められない可能性があります。一方で、あなたが詳細なプロットを考え、魅力的なキャラクター設定を作り、AIの出力を何度も細かく修正・指示しながら一つの作品を完成させた場合、そこにはあなたの明確な「創作的な寄与」が存在するため、完成した作品はあなたの著作物として保護される可能性が非常に高くなります。要するに、AIを単なる自動筆記具としてではなく、作家の意図を反映させるための「道具」としてどれだけ主体的に使いこなしたかが、重要な判断基準となるのです。

 

② 知らないうちに「盗作」?:AIの学習データという落とし穴

 

 次に、AIがどのようにして文章を学習しているか、という点に起因するリスクがあります。ChatGPTは、インターネット上に存在する膨大な量の文章を「読んで」学習していますが、その中には当然、既存の作家が書いた著作権で保護されている小説なども含まれています。

 AIは学習した文章を丸暗記して吐き出すわけではありませんが、学習した表現のパターンを基に新しい文章を作り出すため、偶然にも既存の作品と酷似した表現や文章を生成してしまう可能性がゼロではありません。たとえあなたに盗作の意図が全くなくても、結果として生成された文章が他者の著作物と著しく類似していた場合、著作権侵害を問われてしまうリスクがあるのです。

 

③ ファンフィクション(二次創作)とAI利用の注意点

 

 既存のアニメや漫画などのキャラクターを使って、いわゆる「夢小説」やファンフィクションをAIで執筆する際は、さらに慎重な配慮が求められます。元の作品には、原作者が持つ著作権が存在します。キャラクターのデザインや性格、物語の世界観を無断で使用して商業的な利益を得る(例:販売する)ことは、権利侵害にあたる可能性が非常に高いです。

 また、二次創作は、多くのファンコミュニティにおいて、原作者や作品への敬意を基にした暗黙のルールの上で成り立っています。AIを使って大量の二次創作を機械的に生成する行為は、たとえ個人的な楽しみの範囲であっても、その作品やコミュニティの文化を軽んじるものと受け取られかねない、という点にも留意が必要です。

 

④ 安心して創作するための具体的な防御策

 

 これらのリスクを理解した上で、安心してAIとの共創を楽しむためには、以下のような対策を習慣づけることが大切です。

  • AIの役割を「発想の補助」に留める: AIに本文のすべてを任せるのではなく、アイデア出しやプロット作成の「壁打ち相手」として活用し、最終的な文章表現は必ず自分の言葉で書き上げる、あるいは大幅に書き直すことを心がけましょう。あなたの独自の表現が多ければ多いほど、作品の独創性は高まります。

  • 独自性のチェックを習慣化する: 生成された文章の中で、特に「これは上手すぎるな」と感じるような特徴的なフレー-ズがあった場合、念のため検索エンジンに入力して、既存の文章と似ていないかを確認する習慣をつけると、より安心です。

  • AI利用の透明性を保つ: 作品をWebサイトなどで公開する際は、「この作品はAIの補助を得て制作しました」といった一文を記載することをお勧めします。これは、読者に対する誠実さを示すと共に、AIの利用を隠しているわけではないという姿勢を明確にする上で有効です。

 AIという革新的な技術を活用するからこそ、先行するクリエイターたちが築き上げてきた文化や権利への敬意を払い、関連する法律やマナーを遵守する意識が、これからの創作者には求められています。

チャットgptで小説創作の幅を広げよう

この記事では、ChatGPTを活用した小説執筆の可能性と、その具体的な方法について様々な角度から見てきました。

  • ChatGPTは小説執筆を大幅に効率化する
  • 独創的なアイデア出しの強力なパートナーになる
  • プロの作家も創作活動にAI技術を活用し始めている
  • GPTsを使えばプロット作成を特化・自動化できる
  • 高性能モデルは長文かつ高品質な本文生成に適している
  • 出力の質はプロンプトの具体性で大きく変わる
  • AIに作家などの役割や制約条件を明確に指示する
  • キャラクターには詳細な背景や性格設定を与える
  • 三幕構成など物語のフレームワークをAIに教える
  • なろうRaWiのような外部ツールで客観的な評価を得る
  • AIが生成した文章はあくまでたたき台として活用する
  • 最終的な編集で人間らしい感性や個性を加える
  • AIには複雑な心理描写など表現力の限界があると理解する
  • 著作権や二次創作のマナーを遵守する意識を持つ
  • AIとの共創によってこれまでにない物語を生み出すことができる

 ChatGPTは、作家の仕事を奪う存在ではなく、その能力を拡張し、これまで時間や技術の壁によって諦めていた物語を実現させてくれる、心強い翼のような存在です。あなたもAIという信頼できるパートナーと共に、まだ誰も読んだことのない、あなただけの物語を世界に送り出してみてはいかがでしょうか。

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